二世
まだ言い足りない、といった様子で部屋を出ようとする那佳を、佐和子は扉の前で腕を広げ止めていた。
「落ち着いて!」
「落ち着いてるよ。」
「落ち着いてないからっ!全くもう…何にイライラしてるの?」
不安げに見上げてくる佐和子の瞳に、那佳は少し長く息を吐いた。
その様子に一転して笑顔になった佐和子は、那佳の背を優しく押しながら言った。
「はいっ、深呼吸!すぅー、はぁー…はいっ、もう一回!」
佐和子に促されベッドに座った那佳。
すっかり冷静になった那佳は頭を抱えていた。
「大丈夫‐?」
「…無理。」
「那佳、どうしちゃったの?」
「私にも分からない。イライラして…」
沈んでしまった那佳に、佐和子は安心させるようににっこり笑った。
「那佳は疲れてるだけだよ。色々あったし、昨日もあんまり寝てないんでしょ?」
小さく頷いた那佳に、佐和子はぎゅっと抱き着いて言った。
「大丈夫!明日には、スッキリしてるよ。あたしが保障するっ!」
いつもと変わらない佐和子の温かさに、那佳も小さな身体を抱きしめ返した。
「ありがと…」
「うん!よしよぉし!!」
佐和子の頭を撫でてくる手に笑いながら、那佳は身体の力を抜いた。
すると、まぶたは自然と重くなり、那佳はゆっくり眠りに落ちていった。
「あれ‐?寝ちゃった?」
那佳の寝顔を確認し、クスクス笑いながら、佐和子はベッドに寝かせ布団もきちんとかけてあげた。
そして、ベッドの横で両手を腰にあてた、所謂仁王立ちの状態で佐和子は那佳を見ていた。