二世

居酒屋から出た4人は、冷え切った外の空気に身体を縮こめた。
吐いた息は白く、道も所々凍っている。

タクシーで帰る翠と麻衣を見送り、那佳と佐和子は歩き始めた。


「ゔ‐っ、寒いね。」
「本当にね。冬だから仕方ないけど…早く春にならないかなぁ…」
「うん。あたしは早く夏になって欲しい!」
「夏、かぁ…」
「那佳は夏も暑いから嫌でしょ?」

何でも知ってる佐和子の言葉に笑うしかない那佳。


「そういえば、那佳はあの夢見てる?」
「ううん。最近は見なくなったかな‐」
「え‐!なんかもったいないっ!」
「そう言っても…」

夢は見たくて見れるものじゃない、と苦笑する那佳。


「だって、同じ夢を繰り返し見るなんて不思議だし、ロマンチックじゃん!!あたしなら前世の記憶とか思っちゃうのになぁ。」


胸の前で指を絡め合わせ、ほうっと息を吐く佐和子。
その頬はピンクに染まり、瞳は輝き、那佳はそんな佐和子を可愛く思う。

二人は生まれた時から一緒にいる、所謂幼なじみというもの。
地元で就職した那佳と県外の大学に進学した佐和子。
今は離れた生活となってしまったが、変わらず姉妹のように仲が良い二人。


小柄で少し癖のある長い髪は、大学に入ってから明るい色に染められた。
容姿や言動から幼く見られがちなのが、伊勢谷佐和子。


佐和子より頭一つ大きく、大人っぽい印象を与えるのが金沢那佳。
肩先までの髪は直毛で黒く昔から綺麗だった。


まるで正反対の二人だが、一緒にいるのが当たり前で気を遣わない楽な関係だった。



 
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