二世
目覚めて1番に見えた見慣れない天井に那佳は違和感を覚えた。
瞬きにより、目尻に残っていた涙が耳へと流れた。場所を確認しようと目元を拭いながら、ゆっくり体を起こす。
「え、どこ…?」
眠気は一瞬で消え、那佳はベットの上でぽかんと口を開けたまま、室内を見回した。
白く光沢のある壁、ピンク色で統一されたベットとソファー、化粧台があるだけのシンプルな部屋。
全く覚えのないその部屋には窓が一つあるだけで、出入口となるようなドアがなかった。
じわじわと広がる不安を感じながら、那佳は窓に近付いた。
「嘘でしょ…」
息と一緒に小さく吐き出された言葉。
窓の向こうは先の見えない暗闇が広がり、目の前のガラスには何とも情けない自分の顔がハッキリと映っていた。
もしかしたら、これは窓じゃないのかもしれない。
ゆっくり息を吐き出し、そう思い込むと、今いる場所を特定する為にも、那佳は記憶を辿ることにした。
昨日は久しぶりに皆で集まって飲み、楽しい時間を過ごした。
その後は佐和子と二人で帰り、長く不思議な流れ星を見た。
そこまで考えて那佳の思考は止まった。
その後の記憶が一切ないのだ。
家に着いた記憶も眠った記憶も全くなかった。
不安だけでなく、一気に襲ってきた得体の知れない恐怖心に那佳は強く手を握りしめた。
「佐和子…っ」
1番に浮かんだのは、一緒にいた佐和子。
確かに繋いでいたその手を見ると指先は震えて、冷たくなっていた。
そんな手をもう片方の手で握りしめて、那佳はどうすることも出来ず、立ちつくしていた。