ちっぽけな幸せを君に
 流歌が去ってから三年の月日が流れた。


 片っ端から病院に電話をかけたが結局流歌は見つからず、流歌の抜け殻だけが部屋に残った。


 卒業と同時に就職して俺は何の変哲もないサラリーマンをしている。8時に出勤し5時になると仕事を終えて家へ帰る。


 休みの日には学校の屋上へ行き、寝転がって記憶の中の謳を聴いては流歌との時間を反芻する。


 そこに何もないのはわかっていても自然と足が向いてしまい、その度に苦笑して自分に呆れていた。


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