ちっぽけな幸せを君に
 「歌菜……?」


 先に口を開いたのは綾香だった。


 「心配かけてごめんね、お姉ちゃん……かずきさんも――」


 歌菜は俺達に背を向けたまま答える。


 「まったく……ほんとに心配したわよ――」


 そう言って綾香が足を踏み出した。それを歌菜が止める。


 『来ないで――』


 「来ないで――」


 あの日の流歌の言葉と重なる。


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