ちっぽけな幸せを君に
 綾香の指差す場所、俺から見て歌菜の向こう側の足元。


 「私の中に流歌さんを見るのなら――私はかずきさんにとって私は必要だって思える……」


 小さな黒い斑点がいくつか見える。それは一秒に一つ程度の間隔で増えていく。


 「でも違った……かずきさんの目はいつだって私の中の流歌さんじゃなくて、私の『向こう側』にいる流歌さんを見てた――」


 俺は目を懲らして見る。その斑点は上から落ちてくる何かの雫だった。


< 215 / 276 >

この作品をシェア

pagetop