ちっぽけな幸せを君に
 歌菜の左手首には赤いタオル――いや、赤く染まったタオルが巻かれていて、そこから赤い雫が滴り落ちる。


 「歌菜っ!!」


 「歌菜っ……」


 俺と綾香は同時に叫んで歌菜の元へ走り寄った。


 「こうすれば――流歌さんみたいに私を見てくれるよね?」


 「馬鹿やろう!!喋るな!」


 俺は言いながら歌菜の左腕をネクタイで縛って、綾香に救急車を呼ぶように言う。


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