ちっぽけな幸せを君に
 再び全身に鈍い痛みが走り俺は呻き声をあげる。


 「ちょっとぐらい我慢し、家すぐそこやから」


 男は俺を半分抱えるようにしてフラフラと歩いて行く。


 5分程歩くと男はいかにも高級そうなマンションの前で立ち止まると、入口で携帯を取り出して電話をかけた。


 「ああ、俺や、ちょっと開けて貰えるか?頼むわ」


 それだけ言ってすぐに電話を切ると、男は俺を抱えたままオートロック式の自動ドアの前まで行き、立ち止まる。


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