ちっぽけな幸せを君に
 「そこにいるだけで周りを傷付けてしまうなら……俺は一人でいいよ――」


 「誰も傷付けない人間なんていない!でも傷付けてるだけじゃない……」


 なおも言い続ける綾香を振り切って俺は街を出た。


 知らない街は俺を簡単に受け入れ、そして――それよりもさらに簡単に堕とした。


 毎日昼間から酒を呑み、喧嘩に明け暮れた。


 それは奇しくも俺が殺したい程憎んだ父親のそれと全く同じ事だった。


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