ちっぽけな幸せを君に
 「ありがとう」


 「はい?」


 「あの子、ありがとうって言ってたやろ?」


 原田はコーヒーにミルクを入れて掻き交ぜながら言った。


 「ああ……はい――」


 「どう思った?」


 「いや……何にもしてないのになって」


 原田はコーヒーを一口飲むと、視線を俺に固定して話し出した。


 「人間ってな、生きてるだけで誰かを傷付けると思うんや――」


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