ちっぽけな幸せを君に
 「これはお姉ちゃんや私……かずきさんがその事に気付くまでに傷付けて来た人達の分――」


 パァン!!


 歌菜の手が俺の頬を打ち、部屋に乾いた男が響いた。


 「これぐらい……安いものですよね?」


 「ああ……ありがとう歌菜――」


 熱を帯びた頬よりも――歌菜のその心が痛かった。




 帰りの電車に揺られながら外を見ると、夕焼けに焼かれた空がやけに朱くまるで街全体が炎に包まれている様に見えた。


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