ちっぽけな幸せを君に
 「私は――」


 低くも高くもない、よく通る声で話し始めた流歌の遥か後ろで鳥達が空に軌跡を描く。


 「私には父親がいなかった――」


 虹を追い求める様に鳥達が縦横無尽に飛び回る。


 「私は母がレイプされて出来た子供だった……物心ついた頃から親戚や祖父母は私を汚いモノでも見るように眺めていた」


 流歌の表情は変わらない。いや――


 変えられない――


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