ちっぽけな幸せを君に
 「それは……母すらも同じだった。だから私は自分は『要らない存在』なんだと思ったわ――」


 きっと流歌は自分を守るために表情を……感情を抑え込んで生きてきたのだろう。


 「中学一年の時母が結婚した。義父は優しい人だったわ……母の前では――」


 「流歌……」


 俺の言葉が聞こえないのか、流歌はフェンスの方に向いて続けた。


 「母がいない時、義父は言ったわ『どうせおまえは生まれた時から汚い体なんだから』ってね」



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