ちっぽけな幸せを君に
 それは一緒に暮らす様になってからではなく、あの雨の日の直後。つまり付き合うようになってすぐだった。


 二人きりで居る時の流歌は驚く程表情が豊かになった。


 俺が冗談を言えば笑い、からかうと拗ねたり。まるで今まで溜めていたものを発散するかのようだった。


 初めて流歌の笑顔を見た俺は思わず抱きしめていた。


 綺麗な……純粋な笑顔だった。まるで産まれたばかりの赤ん坊の様に無垢で屈託のない笑顔。


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