Hello my sheep
その灰色の瞳に、八鹿は引き込まれるような錯覚を覚えるも、返事をしない彼に続けて言葉を紡ぐ。


「…あのぅ、怪我とか…」

「…ない」



もう声変わりを終えているらしい、低く響く声が、短く答えた。

それを聞いてほっと安心する。
その段階で気付けば、八鹿は自分が彼にしっかりと抱きとめられる形で踊り場に転がっていたことに気が付いた。

どこうと身動きしたところで、違和感に気付く。
もう一度、少年に声をかけた。


「あの、ほんとごめんなさい。えと、大丈夫なので離し…あれ?」


再び覗きこんだ所で、八鹿は頓狂な声をあげた。
ついさっき言葉を交わしたはずの目の前の少年は静かに寝息を立てていた。
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