街角の空 君の歌
店に着き、あたしはイヤホンを外した。
あたしの大好きな場所、
[ Our space ]
でも店内はロックが鳴り響きギターやベースがたくさん立て掛けられている。
「いらっしゃい、なんか元気無いね。」
ロックを愛し、ギターを愛するあたしの喋り相手、中田雅也。
30歳、既婚者。
奥さんは中田にはもったいないくらい美人だ。
中田は顔は悪くないけど、
タトゥーが体中に彫り込まれてるせいか、あまり人が寄って来ない。
そんな中田を中田と呼ぶのは、あたししかいないらしい。
「外クリスマス一色だね。」
「今日イヴだしね。」
「中田は家族でパーティーするの?」
「Wiiパーティーな、だから今日は7時で閉店。」
中田がWiiやってる姿想像したら‥、
恐ろしい。
それに7時までなんて‥、
今日は9時までいようと思ってたのに。
計画も虚しく崩れ、近くにあった椅子に腰をかけた。
「‥明日は何時まで?」
「7時。」
「またパーティー?」
「ライブ行くって言わなかったっけ?」
「あ、Pay Alonのだっけ?」
「そう、今回は新メンバーのロンが入ったから超進化してんだよ、それに‥」
出た、ロック熱く語る病。
そんな中田を無視して、あたしは近くにあったギターに手を伸ばした。
「あっ、それはダメ。」
「え?」
「それ、今日修理出しに来た人のだから。」
「‥ふーん。」
あたしは伸ばした手を元に戻し、店内を歩いた。
「相変わらず、人いないね。」
「あきが来る前は結構客いたんだけどな。」
中田はタバコに火をつけた。
「あたし疫病神?」
「かもな(笑)」
煙を吐き出した中田は、裏の部屋に入って行った。