さよなら

初めて慧先輩のことを人に話した。

さーちゃんは、何故かとっても真剣な顔して聞いてる。

ちょっと怖い…。

話終わると、さーちゃんが一息つくように顔を下に下げた。



「そっか…」

「うん、慧先輩すっごいやさしいんだよ!」

「帰りは一緒に帰るの?」

「ううん、帰る方向違うから…」

「そっか。帰り時間は、きっと拓と一緒でしょ?一緒に帰りなよ」

「う、ん?」

「ほらっ最近物騒だからさ、一人で帰らすの心配なの」



さーちゃんの様子がいつもと違った、どことなくそわそわしている。

さーちゃん、どうしたんだろう。

あんまり、慧先輩と仲良くないのかな…



丁度校門に着いたら、見慣れた後ろ姿。


「慧先輩!」


あたしが呼び掛けるとニコッと笑ってくれた。

慧先輩に会うと思わず顔が綻んでしまう。


「おはようございます♪」

「おはよ」


挨拶を交わすと先輩はスッと走っていってしまった。

一緒に行きたかったのに・・。



「ねぇ…」

「ん?」

「ゆう、もしかして恋してる?」


えっ?

あたしが慧先輩に!?

そんなわけないよっ

急に胸がキューっと締め付けられた。


「えっ?!ちょッ…さーちゃん何言ってるの~?そんなことないって」


笑いまじりで、さーちゃんの問いに返した。

そんなことないよ。

あたしが人を好きになるなんて!


「そう…」


急にさーちゃんの声のトーンが下がる。


「・・・どうしたの?」

「なんでもないよ。」

「・・・うん。」


変なさーちゃん・・・。




この時は全然わからなかった。

だけど、今になって後悔してる。


いつも、笑顔だったから気がつかなかった。




さーちゃんも・・・慧先輩も・・・・・。
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