さよなら

「…華原先輩ですか?あの、バイオリン…」

「えっ、うん。佐川くんだよね?」

「俺のこと知ってるんですか?」

「うん。校内で知らない人はいないよ…ボクシング部期待のエースって言ったら君のことだもん」


制服についた砂をはらいながら、そういえば佐川くんも自分のことを知ってることに気がついた。

なんで、僕のことを…


「ゆうから、先輩の話聞いてます。」

「えっ?ゆうちゃんから?」

「アイツとは小さい頃からの仲なんで…」

「そっか…余計恥ずかしいところ見せちゃったな…」

「先輩、いつからこんなこと…」

「二年から。」

「先輩っその痣…全部?」



はだけたシャツから体の痣を見られてしまった。

アイツらは見えるところに傷をつけない。

そこだけが救いだと思っていたのに…


「うん…」

「なんで?誰にも相談しなかったんすか?」

「相談なんて、する相手もいないし無駄だよ…」

「……ゆうはこの事は?」

「知らないよ…君からも絶対に言わないでほしい…」

「でも…」

「心配かけたくないんだ!」




思わず大きな声が出てしまった。

その後の言葉は、次々と出てきた。



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