さよなら

4.最後の音色


ついに明日が卒業式。

あたし達二年は、卒業式の準備で大忙しだ。

うちのクラスの担当は、体育館の机とか椅子を出して、飾りつけして…所謂雑用だ。


そして、今日が先輩と過ごせる最後の日…。

大切にしなきゃ。

音楽室での…先輩との時間を…



「ゆう!」


後ろから声をかけられて振り返ると拓ちゃんがいた。

拓ちゃんはここ二、三日なんかおかしい。

土日もどっか出かけるから駅まで送ってくから。とか、今日も朝の部活をさぼって一緒に登校。

どうしたんだろ…?



「拓ちゃんっこの机どこ持ってけばいいのかなぁ~重いよぉ…」

「これ俺が持ってとくから、お前音楽室行けよ」

「え?」


きょとんとした顔で拓ちゃんを見ていると、拓ちゃんは頭を掻いて一瞬そっぽを向いて机を持ってくれた。

音楽室って先輩のところってこと?


「先輩と今日で最後だろ?部活終わったら迎えに行くから」

「でも…」

「先生には適当にいっといてやるから、今のうちだぞ」










「…ありがとう」




拓ちゃん、ありがとう。


あたしは体育館を後にして、音楽室に向かった。


歩いていたのに、いつのまにか走っていた。


一分でも一秒でも先輩と多く一緒にいたい。


なんだか、病気みたい。


恋愛中毒って昔に流行ってたみたいだけど、


あたしは先輩中毒だ。




早く、あの優しい笑顔が見たい。


あの音色が聴きたい。
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