さよなら
音楽室につくと先輩はビックリしたような顔をして『早いね』って笑った。
抜けてきちゃったって笑っていうと、またビックリした顔をして笑ってくれた。
その先輩の目を細めて顔がくしゃってなる笑顔が、大好き。
今日は、卒業式前日だから先輩はピアノの練習をしていた。
「先輩、明日ついに卒業式だね…」
「うん。ピアノ緊張するなぁ~」
「大丈夫!慧先輩上手なんだもん♪」
先輩はピアノも上手!
あたしも小さい頃ピアノをやっていたけれど、今まで続けていたって先輩ほど上手くなれるかなんて見当もつかない。
「うわ~そうやってプレッシャーかけるんだから~」
「アハハッ」
あたしはピアノの近くの机の上に腰かけた。
いつのまにか音楽室にきたらこの位置に座るようになっていた。
だってここは、ピアノを弾く先輩の真横なんだもん。
あたし達はしばらく他愛のない会話を楽しんだ。
どの話もくだらないし、大したことのない会話だけれど、とっても楽しくてしょうがなかった。
「あのさ…」