さよなら

「…あの匂いさ、ゆうがこの前ショップで『イイ匂い~♪』って言ってたやつじゃない?」


「ぇ?」


お昼休み、中庭でお弁当を食べていると加奈が呟いた。


「なんの?」

「だから、拓の香水!」

「えっ?そうだったっけ?」

「…拓也ドンマイだね」

「ん?加奈今なんて言った?」


卵焼きが箸から落ちそうになって一瞬意識がそっちにいっちゃって聞こえなかった。

拓也って言われると違和感あるけど拓ちゃんのことだよね。

拓ちゃん、香水変えたんだ~。

気づかなかったなぁ。。


「聞こえなかったなら、いーよ。」




♪~♪~~



その時だった。

とても綺麗な音が聞こえた。

あまりにも綺麗な音で驚いたんだ。


「加奈ッ!!」

「ッなに?!」

「ねぇっ!バイオリンの音聞こえるのあたしだけ!?」


言った途端、加奈が笑いはじめる。


「アハッハハハ!!んなわけないって!私にも聞こえてるから。」

「なんだぁ~!驚いたし!」

「今、卒業式で校歌とか伴奏する人が音楽室使って練習してるから、その人じゃない?」

「ふ~ん。」




その時はなにも思ってなかった。


なのにね・・・


なんでだろ・・・今でも忘れられないんです。
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