さよなら


「・・・なんでこんなところ来たの?」



・・・・そういえば。



「ん~~」

「・・・?」



どーしよ、どーしよー!!

あー絶対、今のあたしの顔は真っ赤だ。

なんて言ったらいいんだろ・・・?

そうだッ!




「…綺麗な音が聞こえたからですッ!!」


「ぇ?」


さらに慧先輩は間の抜けた声を出す。

そんな先輩の顔も真っ赤になっていった。


「・・・慧先輩?」

「////」

「せんぱい?」

「・・・はっ初めて言われたッ!」


急に大きい声を出す慧先輩に思わず驚いてしまった。


「初めて言われたんだッ!!綺麗な音って…」

「…嘘だぁ~!」

「嘘じゃなくてッ!!先生にも心がないって言われるし・・・ハハッ」


そう言うと、急に淋しい笑顔で笑った。

なんでだろう・・・そんな顔をしてほしくないって思ったんだ。


「そんなことないです!あたしは先輩のバイオリン好きです!」


気がつくとあたしは顔を真っ赤にして叫んでいた。

ハッと我にかえると先輩が驚いた顔をしてあたしを見上げていた。


「・・・あのさっきの曲弾いてくれませんか?」

「うん。」




今度は優しい笑顔で微笑んでくれた。

それだけであたしの心は何だか温かくなった。

不思議だった・・・

こんな気分になるのは初めてで・・・・

慧先輩がゆっくりとバイオリンを弾き始める。


それはまるで、子守唄のようだった。


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