こちら新宿中央署刑事課
 岩永がそう言って給湯室へと行き、持っていたカップに追加でコーヒーを淹れる。


 坂野も一杯飲んで心を落ち着けようと思って、追うようにして給湯室へと向かった。


 歩きながら思う。


「石松と綾坂を捕まえるのには時間が掛かるかもしれない」と。


 何せマル目らしいマル目は一人もいないのである。


 あの人間たちを見かけた人がわずかでも出てくれば、捜査はとんとん拍子で進むのだが……。


 そこのところは坂野たち所轄じゃ限界がある。


 坂野は淹れたコーヒーを一口啜り取ると、管理官席へ向かった。


「栗川管理官」


「何だ?」


「本件に関して、本庁からの応援を要請いたします。我々所轄では手が足りないので」


「分かった。俺から上の人間に頼んでみる。だけど、君たちもしっかり動いてくれよ」

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