こちら新宿中央署刑事課
 坂野たち警察関係者は、地検がタイミングよく、前島実業と同社のフロントである村川グループに対して強制捜査をしたことで捜査が進展するのを期待していた。


 本庁内には企業犯罪やマルBの資金源となっているフロント企業を取り締まる財務捜査官がいて、出番こそ少ないものの、水面下でずっと捜査を進めている。


 特別捜査官の中の一部隊で、陰に隠れるような感じの部署だった。


 普段から一般捜査員とは一線を画(かく)し、絶えず動き続けているらしい。


 どうやら前島実業社内から、今回の前島恒世が行なった株を使っての企業犯罪に関して証拠品等が出てくれば、捜査は一気に進む。


 それに同じく強制捜査の入った村川グループでも上層部にいる寛之と妻の優子も捜査対象者となる手筈だ。


 坂野たち所轄の刑事ですら、本庁のデカや察庁関係者などと対等に渡り合えるぐらい、力を付けてきつつある。


 ただ人数が少ないので、大規模な捜査をするのには割が合わない。


 だが管理官である栗川が本庁に応援を要請することで、捜査が一気に進むものと思われたし、実際、捜査員として投入されるのは本庁の刑事じゃなくて、事件が起きた場所の所轄署員が優先である。

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