こちら新宿中央署刑事課
第20章
     20
「ちょっと出てきます」


 三月上旬のまだ幾分冷える頃、坂野が署に出勤してきて、給湯室でコーヒーを一杯淹れて飲んだ後、言った。
 

 前島実業の元社員で失業中の河北礼司宅に行くため、警察手帳とICレコーダーを持ってオーバーを羽織り、刑事課フロアを出る。


 河北が警察相手にタレこみのメールを送ってきたことが気になって仕方ない。


 河北は自社の情勢や内部で起きていること、それにフロント企業としてバックに付いて癒着している村川グループについて、何かを知っているはずだ。


 新宿区内でも外れに河北のマンションがあり、訪ねてみる価値はありそうだった。


 前島実業で営業本部主任を務めていた永嶋雄一朗殺害と、その後を追うようにして起こった、大型トラックによる松岡興業の岩沼孝一専務ひき逃げに関して、河北は何かを知っていてもおかしくない。


 繋がりはある。


 岩沼が前島実業に籍を置いていて、独立する形で、松岡興業を作ったからだ。


 仮に村川グループと癒着し続けている前島実業に対し、検察の内偵捜査が終了して、立
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