こちら新宿中央署刑事課
件だけとなった状態で、前島恒世が自社の資産公開に踏み切ったとしても、株の売買はなされている。


 時間外取引という実に巧妙な手口で、ライバル会社のアイバドーラを始め、他数社の株式は取得された。


 前島実業本体が発行済み株式の三分の一超を取得して、筆頭株主に躍り出たのは紛れもない事実だ。


 だが、この株式の取得方法は金融証券取引法違反である。


 時間外取引で社の株式の三分の一以上を取得する際には、買収企業側に情報公開が義務付けられるのだが、恒世はそれをしなかった。


 金融の世界では、この手の事柄で虚偽申請をした企業に対し、課徴金が督促される仕組みとなっている。


 特捜の検事たちも一定の内偵捜査は済ませて、後は踏み込むだけなのだが、下手すると社員たちがデータを隠したりしている可能性が高い。


 そのことを現段階で一番よく知っていると思われるのが、元社員の河北だろう。


 今回の事件においてキーマンとなる人物だ。


 永嶋殺害で主犯を務めた古河村は自首してきて、内多は何者かによって撲殺され、落下
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