こちら新宿中央署刑事課
「失礼いたします」


 坂野が靴を脱いで揃えてから、室内へと入っていく。


 部屋の中は一際散乱していた。


 やはり散らかった場所にいると、頭も回らないらしい。


 だが、これが職業を失った人間の現実だ。


 同情したいのだが、実際目の前にいる髪の毛がボサボサで髭もろくに剃ってない男が、一連の事件に関して知っているものと思われる。


 河北は前島恒世の元側近だった。


 おそらく恒世がビジネスにどんな手を使うのか、表も裏も全て知り尽くしているはずだ。


 そして社内で拗(こじ)れていた人間関係が原因で、一連の事件が巻き起こったことも知っているものと考えられた。


「……お腹空いてるんですけど」


 河北がそう漏らし、買い置きしていたと思われるカップラーメンを作るためにお湯を沸かし始めた。

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