こちら新宿中央署刑事課
 やはり大手上場企業でも、抜けてしまった人間は無残だ。


 多分、ろくに食事を取っていないものと思われたので、坂野が羽織っていたコートを取ってリビングに座り、待ち続ける。


 コーヒーを一杯淹れて持ってきたので、坂野が、


「ああ、お構いなく」


 と言って、正座してから河北が食事を取るのを待ち続ける。


 そして同時に仕舞い込んでいたICレコーダーのスイッチを押してオンにした。


 便利な時代で、これさえあれば、ボールペンとメモ用の手帳が要らない。


「前にも警察の方が来られましたけど」


 食事を取り終わった河北が意想外にもそう言った。


 坂野が胸のポケットから写真を取り出し、


「この刑事でしょう?」


 と言って、東園寺の顔写真を見せる。

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