こちら新宿中央署刑事課
 これから先、坂野たち警官は河北ら関係者を取り調べることで、一月に巻き起こった二件の殺人事件に関しても、関連性がないかどうか調べ上げるつもりだ。


 それに坂野も薄々気付いていた。


 全てを仕組んだのは前島恒世という毒蛇であると。


 あの男の仕業で間違いなかった。


 猛毒がばら撒かれる前に、血清(けっせい)を打たないといけない。


 これ以上、本件に関して被害者が出るのを防ぎたかったのだし。


 坂野は署の地下車庫に車を着けると、助手席のロックを解除し、


「どうぞお降りください」


 と言って、河北を降ろした。


 河北が無言のまま降りる。


 坂野が脇に付き添い、署の建物へと向かった。


 歩きながら考える。

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