こちら新宿中央署刑事課
 坂野たち所轄もまだ事件は続いていると思っていた。


 異動はなく、四月からも署で働けることが決まっていたのだし……。 


 麻倉の身柄を確保すれば、事件は一応片付くはずだ。


 腑(ふ)に落ちないことはない。


 綾坂と石松は拘留期限前に自白したので、すぐに東京拘置所へと移された。


 古河村もすでに拘置所生活を始めている。


 事件は迷宮入りせずに済んだ。


 だが、前島恒世という男は実にあくの強い人間だった。


 組織を温存するためなら、何でもする男だったのだろう。


 <生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかし)めを受けず>という言葉もある通り、捕まるぐらいなら命を絶った方がいいとすら感じていたようだ。


 坂野や岩永、西谷など、新宿中央署刑事課の人間たちも理解に苦しむところがあったのだが……。


 麻倉充が捕まるのはよもや時間の問題だ。

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