こちら新宿中央署刑事課
 坂野たちはさすがに仕事始めに殺しのヤマがあったので、正直なところ疲れている。


 だが悠長なことは言っていられない。


 捜査は続行だ。


 その頃、同じ強行犯係に属する西谷が害者の生前の人間関係を洗い始めた。


 前島実業は近く異例ではあるものの、株主が集まって、総会が開催されるらしい。


 筆頭株主は社のトップにいて、取締役社長を務める前島恒世(つねよ)だった。


 恒世は一応会社でも社長室にいて、朝から夕方まで下から送られてきた書類を読んだり、パソコンを使って資料を作成したりしている。


 陣頭指揮を執っている割には、人間的な器は小さいのだった。


 坂野は西谷に電話で恒世が事件に関係してないかどうか、確認して欲しい旨伝える。


 この時期の、異例とも言える前島実業の株主総会の意図は何か……?


 おそらく開催する原因は、二つのうちのいずれかが考えられると思われる。


 一つは社益が思うように上がっていなくて、株式の一部を他社に譲渡するということ。

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