こちら新宿中央署刑事課
 おそらく社が近々行なうであろう、株主総会に向けての準備をしていたものと思われる。


 坂野は西谷から得た情報を元手に、もう一度振り出しに戻って捜査するつもりでいた。


 古河村と内多の指紋は確かに屋上の手すりから検出されている。


 おそらく両者が事件に何らかの形で加わっていたのは事実だ。


 それに遺体の脇に置いてあったカバンも謎である。


 検視官の三谷も検視の際に言っていた。


「なぜ、所持してたカバンの口が空いたままだったんでしょうね?」と。


 ケータイや財布などが取られていなかったから、物取りの線は薄かったにしても、口が空いたままだったというのは極めて不自然で、合理的な説明が付かない。


 坂野はすでにカバン自体を鑑識に回して、付着していた指紋や体液などを鑑定してもらうつもりでいた。


 仮に鑑定するとなると、古河村や内多など、現時点で犯行に関わっている可能性が一番高い人間たちがまず浮上し、追って犯行に加担していた人間たちも残らず洗い出されると思う。


 出勤していた社員から聞いた話によると、社長の前島恒世は叩き上げで、一代で前島実
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