こちら新宿中央署刑事課
 と重ねて言った。


「なぜです?」


「両者は前島実業の元社員もしくは現役社員ということで接点がある。仮に永嶋雄一朗を偽装自殺させた人間が古河村比呂氏と内多桂三だったとすれば、あいつらは深夜の四谷交差点で成功している元社員をひき逃げするぐらい、訳ないだろう。何せ、会社員として能力の劣る人間が半ば僻(ひが)みのような形で上手くいってる人間を殺すことも十分考えられるからな」


「坂野さんはそこまで深読みを?」


「ああ。人間社会というのは時代を経てもそう変わらないもんだよ。俺も昔、上司からその手のことに関して散々教わった」


 坂野と粕屋は同じ巡査部長でも経験が違う。


 坂野は高卒で入庁してきたノンキャリの刑事で、十年以上警察の水を飲み続けていて、一方の粕屋は警察社会に入ってきたばかりの準キャリのデカだったからだ。


 当然、坂野の方が場数を踏んでいたので、捜査に関して手抜かりがない。


 この悪の街、新宿で一体何人もの凶悪犯を検挙してきたことか……。


 坂野自身、常に拳銃を持ち歩いていた。
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