こちら新宿中央署刑事課
 犯人サイドから坂野たち警官が何かを突きつけられている。


 それが一体何であるのか……?


 それに肝心の動機がない。


 なぜ永嶋雄一朗はあの新宿の自社ビルの屋上で腹部を刺されて、地上へと落とされたのか……?


 坂野はいったんパソコンから離れ、タバコを吸いに近くの課内にある喫煙コーナーまで歩いていく。


 おそらく腹部前方のあの刺し傷を見ると、誰かが後ろから羽交(はが)い絞(じ)めにして、凶器を持った人間が前側から刺したのだろうと思われる。


 まだ凶器は発見されてない。


 坂野はタバコ入れからタバコを一本取り出し、銜え込んで火を点けた。


 吸いながら、改めて事件のことを頭の中で整理していると、警部補の岩永がやってくる。


「サカさん、美味そうに吸ってるね」


「ええ。……もしかして警部補もお吸いになるんですか?」

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