こちら新宿中央署刑事課
 不意に背後で物音がし、坂野は幾分心が騒いだからか、急ぎ足になった。


 駆け足で署の建物に向かっていると、次の瞬間、後頭部に物凄い痛みを感じる。


 手を頭部に当ててみると、血糊(ちのり)がべったり付いていた。


 そしてそのままホシは立ち去る。


 上下とも黒い服を着ていて、目だし帽を被(かぶ)り、逃げていく様が脳裏に焼きついていた。


 たまたま近くにいた警官が坂野に駆け寄り、


「大丈夫ですか、坂野巡査部長?」


 と声を掛ける。


「ホシを追え。捕まえろ」


「でも、こんな状態じゃ」


「救急車を一台呼んでくれればいい。君たちはあいつにワッパを掛けろ」


「分かりました」


 その警察官がケータイを取り出し、救急車を一台呼ぶ。
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