こちら新宿中央署刑事課
 しかも、事件が遅々(ちち)として未だ解決していないことに半ば痺れを切らしたような状態で。


「東園寺(とうえんじ)君、村川グループに関する情報は集まったか?」


「ええ。今現在、鋭意捜査中です」


「よし。進めてくれ」


「了解」


 坂野はそのやり取りを聞いて思った。


「今、栗川が呼んで話をしたのは本庁組対五課の東園寺護(まもる)警部補だ」と。


 東園寺は組対五課に所属するデカで、銃器や違法ドラッグなどの取引を行なう人間たちを監視し続けていると聞いている。


 前島実業のフロントの村川グループは、組対五課の連中が動くのを極度に警戒していて、坂野たち刑事課強行犯係の刑事でも想像がつかないことを行っているようだった。


 いわゆる厚労省の麻薬取締官――通称麻取(まとり)と呼ばれるのだが――がバックに付いている。


 バックに付いているというより、東園寺本人が麻取の行うような捜査を極秘でしているのだった。

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