こちら新宿中央署刑事課
 坂野と岩永、それに西谷は三人揃って捜査会議に出席した。


「永嶋雄一朗殺害事件及び岩沼孝一ひき逃げの二件に関して、何か新たな情報は出たか?」


 管理官席にいる栗川がそう問うと、本庁組対五課に所属する警部補の東園寺護が手を挙げて立ち上がり、


「海外ルートに流されたブツに関しては、我々組対五課で捜査を継続しています。東京湾を通じた船舶の出入国に関しても鋭意捜査中です」


 と言った。


「まだ村川グループにガサ入れするのは早いな」


「ええ。ですが、前島実業が市場での株式取得を終えるのは時間の問題です。最悪の事態になる前に何とか回避しないといけないと思います」


 東園寺がそう言って書き込んでいた警察手帳を閉じ、椅子に座る。


 その場にいた刑事たちは皆、思っていた。


「村川グループは放っておくととんでもないことを仕出かすな」と。


 現にあの組織の人間たちは夜になると、新宿の街を暴れ回っている。


< 70 / 144 >

この作品をシェア

pagetop