こちら新宿中央署刑事課
 坂野は前島実業の営業本部主任を務めていた永嶋雄一朗が単なる転落死ではないことを感じていたし、一月半ばの深夜、四谷の交差点で松岡興業の取締役専務の岩沼孝一が大型トラックによってひき逃げされた事件も偶然起こったとは考えにくいと思っていた。


 前島実業に関係している、もしくは関係していた人間が、二人相次いで死亡した。


 これはおそらく恒世の差し金だろう。


 坂野たちはそう踏んでいた。


 二月中旬を過ぎて、一ヶ月前の事件が風化し始めた頃、お台場の倉庫で内多桂三の撲殺死体が見つかった。


 後頭部を鈍器のようなもので数度繰り返し殴られ、死亡していたようだ。


 坂野たち新宿中央署のデカの代わりに、所轄署である港南(みなとみなみ)署の刑事たちが臨場した。


 内多は前島実業の営業部副主任で、永嶋殺害の一件で疑いが濃厚だった人間だ。


 誰が内多桂三を撲殺したのだろう……?


 警察の捜査がかなり進んでいたので、おそらくジリジリと焦っていた前島実業専務の古河村比呂氏の仕業だろうと思われる。


 それに永嶋が自社ビルから転落した際に一緒に落ちたカバンを物色したものと思われる
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