こちら新宿中央署刑事課
 岩永がそう言って笑った。


 坂野も岩永の言っていることが案外的外れでもないような気がしている。


 というか、岩永の吐いた言葉はかなり核心に迫るものだった。


 坂野がデスク上で持っていたオートの手入れをし始める。


 署の地下一階にある射撃訓練場で、坂野はいつも巡査部長の藤野と一緒に銃を使っていた。


 坂野は元々拳銃を持ち歩くタイプだ。


 ここ新宿の街では何が起こってもおかしくないのだから。


 悪の街では、常に武装しておかないと、変な人間たちからやられたりする。


 坂野は中学、高校、警察学校と七年弱ほど剣道を続けてきた。


 今でこそ武道はもう忘れてしまっているのだが、射撃訓練をするたびに、銃の使い方だけは衰えていないような気がしている。


 拳銃は刑事にとって、警察手帳の次に大事なものだ。


 坂野は拳銃の手入れが終わると、給湯室へ向かった。
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