こちら新宿中央署刑事課
 物色された永嶋のカバンは漁られたのが金品じゃないところを見るに、おそらくメモリーカードなど、データの類だろうと思われた。


 岩沼ひき逃げの際に採取されたタイヤ痕は鑑定の結果、普通トラックで、Nシステムによるナンバー読み取りの結果、新宿ナンバーだったことが割れている。


 新宿区内で自由に乗り回されたものと推定された。


 同時にトラックの運転手がマル目の証言と似顔絵捜査官の捜査で、綾坂恵作という男だったと判明している。


 それに石松貴朗が奪ったメモリーカードに入っていたのは野党に転落した由自党の派閥の領袖たちが、選挙敗北後、金に困り、都内を拠点として全国展開するマルBを使って巻き上げた裏金の記録一覧だったことも把握できている。


 石松が奪った記録媒体には政党の汚職が詰まっていたということになり、事件の捜査は二転三転することになりそうだ。


 坂野はフロアに詰めながら思っていた。


「何か恐ろしいことが背後にある」と。


 それは今現在の警察と検察、それに金融庁という三つの部署が連携して追うべきもので、単独行動は決して許されない。

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