こちら新宿中央署刑事課
するのだが、これはあくまでポーズに過ぎないと思う。


 株が値上がりすれば、当然余っていた分の株式を売却することも考えられる。


 恒世が永嶋雄一朗を殺害したのは実際のところ、このインサイダー取引を行なうための下準備だったのではないか……?


 そう考えると、永嶋殺害直後、彼の会社の執務室から株関連のデータ類が残らず盗まれていたということに関して合理的な説明が付く。


「岩永警部補」


「何だ、サカさん?」


「前島恒世は極悪人ですよ。インサイダー取引を行なう際に、自分の部下が持っていたデータ類を盗んでいたわけですから。おそらく一連の株式市場での株価の操作も恒世が行なっていた可能性が大です」


「サカさんはそこまで読んでるのか?」


「ええ。一刻も早くヤマを解決に導かないと、今度はまた新たな犠牲者が出ます」


「新たな犠牲者って、今回の恒世絡みの人間がまた消されるってことか?」


「はい。私は確かに所轄の刑事です。ですが、本庁の人間たちの動きが鈍いことはやはり
< 93 / 144 >

この作品をシェア

pagetop