こちら新宿中央署刑事課
 警察でもキャリア組というのは国家公務員Ⅰ種試験合格の花形とでも言うべきエリートで、坂野たちノンキャリとはまるで違う。


 おまけに栗川は本庁組対五課警部補の東園寺護を連れてきていた。


 隠し玉とでも言うべき東園寺を捜査に投入することで、前島実業のフロントである村川グループを、銃器や違法ドラッグなどの取引容疑で捕まえるつもりのようだ。


 もちろん村川グループの人間たちは、組対五課のデカたちが動くのを極度に警戒している。


 厚労省の麻薬取締官である麻取が東園寺たちの組対五課のバックに付いていたのだし、むしろバックに付いているというよりも、東園寺本人も極秘で囮捜査をしているのだった。


 日本国内において原則禁止されているこの捜査手法も、ブツが出そうなとき、この手の部署にいる人間たちを捜査に投入して、ホシを検挙してしまうことも有り得るのだから……。


 坂野たちにとってしばらく様子見が続くようだった。


 そして二月も下旬が過ぎ、三月に入ってからヤマが着実に動き出す。


 坂野がその日、いつも通り署三階にある刑事課フロアに入っていくと、警部補の岩永が、


「サカさん、朝一のニュースで見なかったか?前島実業と、フロントの村川グループに対
< 99 / 144 >

この作品をシェア

pagetop