【短】同窓会―episode 3―
2年後―――
中学3年生になった私は、最後の大会に向けて日々練習していた。
秋山先輩のタイムまで、あと0.1秒。
「はぁっ…」
走り終えて、荒い呼吸で飲み物を取りにいく。
すると目の前に差し出された1本のペットボトル。
「お疲れ、後輩。」
聞き覚えのあるその声に、勢いよく顔をあげる。
「…秋山…先輩。」
目の前には、すっかり大人びた秋山先輩。
嬉しい反面、がらんどうな目をしている秋山先輩が、恐くなった。
「どうして…。」
「どうしてって、生意気な後輩の顔を拝みに来たんだよ。
そろそろ大会だろ?」
違う意味で聞いたとは知らずに、秋山先輩はそう言って笑った。
ただ、目だけは笑ってなかった。
心のヒビが、深くなっているのを感じた。
「…先輩…。」
「お前は、相変わらず生意気そうだなー。」
楽しそうな声と、死んだ目。
明らかに、様子の変わった秋山先輩が、恐くて仕方がなかった。
「…先輩…なんで…。」
「嶋津、お前さっきから変だぞ?」
そう言って私を覗き込む、死んだ目。
………変なのは、秋山先輩だよ…?