【短】同窓会―episode 3―


2年後―――

中学3年生になった私は、最後の大会に向けて日々練習していた。

秋山先輩のタイムまで、あと0.1秒。


「はぁっ…」


走り終えて、荒い呼吸で飲み物を取りにいく。


すると目の前に差し出された1本のペットボトル。


「お疲れ、後輩。」


聞き覚えのあるその声に、勢いよく顔をあげる。


「…秋山…先輩。」


目の前には、すっかり大人びた秋山先輩。

嬉しい反面、がらんどうな目をしている秋山先輩が、恐くなった。


「どうして…。」


「どうしてって、生意気な後輩の顔を拝みに来たんだよ。
そろそろ大会だろ?」


違う意味で聞いたとは知らずに、秋山先輩はそう言って笑った。

ただ、目だけは笑ってなかった。
心のヒビが、深くなっているのを感じた。


「…先輩…。」


「お前は、相変わらず生意気そうだなー。」


楽しそうな声と、死んだ目。
明らかに、様子の変わった秋山先輩が、恐くて仕方がなかった。


「…先輩…なんで…。」


「嶋津、お前さっきから変だぞ?」


そう言って私を覗き込む、死んだ目。


………変なのは、秋山先輩だよ…?




< 10 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop