【短】同窓会―episode 3―
…まぁそんなこと考えても、しょうがない。
あたしは水城先生から目を逸して、自分の授業の為の資料作りに励む。
今授業では、
夏目漱石の『こころ』を読んでいる。
どうやったら生徒は、この物語の深さを、分かるだろうか?
そんなことを思いながら、指はパソコンのキーを叩く。
不意にその腕が、強い力で掴まれた。
隣りで眠る、水城先生のものだ。
…珍しく、寝ぼけてんのかな?
私はそっと、手を外そうとする。
すると、水城先生は…
「………行かないで、
未葵…………。」
……みさき?誰?
水城先生の目からは、涙が溢れている。
それが妙に、秋山先輩とカブる。
寂しそうな、壊れそうな表情をした、あの日の秋山先輩。
…ねぇ、水城先生?
先生まで、いなくならないよね?
妙に胸騒ぎがする。
妙に気になる。
秋山先輩に似た、水城先生。
あなたは、みさきに、置いてかれたの…?