【短】同窓会―episode 3―
「…そういえば…。」
私が独り言のように呟くと、ん?、と秋山先輩が振り返った。
「秋山先輩って、どこに住んでるんですか?」
いつも送ってもらってるけど
もしうちの家より遠いなら、だいぶ迷惑だよね?
そう思っていたら、秋山先輩は、
「あぁ……」
と、何故か少し言葉を濁した。
「お前ん家の、近くだよ。」
とだけ言って、先に行ってしまう。
あたしはこの日、秋山先輩のヒビを見た。
心に刻まれた、深いヒビを。
「………ありがとう、ございます。」
家の前まで来て、あたしは秋山先輩にそう言った。
秋山先輩は、何故か少し、悲しそうな目をしていた。
そしておもむろに、口を開く。
「心配すんな、嶋津。
俺ん家は、二葉養護施設だから、十分近い。」
そう言って、帰っていく。
いつもと同じ道を。
言われてみれば、確かにその道の先に、二葉養護施設はあった。
………深い、心の闇を、あの悲しげな目に見た。
それが…妙に。
秋山先輩が消えてしまうようにみえて、恐かったんだ。