BitterChocolate
"ありがとう"
 そして次の日の放課後,宏治は本当に来た。
一人で雪に覆われたグラウンドを窓から眺めていた私は,肩を軽く叩かれてはっと振り向いた。
目の前に,宏治の顔があった。少し疲れたような,そんな顔をしている。
宏治はやっぱり背が伸びた,と私は思った。半年前─つまり6月に出会った時はまだ,こんなに見上げていなかった気がしたからだ。
けれども宏治の綺麗な瞳は,今も変わらない。
「今日も部活…だよね?話,すぐ終わるから。」
私が言うと,宏治は曖昧に首を振った。
「そうだけど…別に長くなってもへーき。伸浩サンには,遅れるかもって言ってあるから。」
「そう…」
しばしの沈黙。
気まずくなった私は唐突に口を開いた。
「話っていうのは別に,前の関係に戻ってとか,そういうことじゃないの。宏治にお別れだって言われた時,なにも言えなかったから…今日は,『ありがとう』を言いたくて。」
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