雪女の背に続け
序 二代目襲名
桜木神社。
阿弥樫町に数多く存在する神社の一つ。
樹齢千年を超えるほどの大きな大きな桜の木をご神木として祀る神社。
そこで、厳かにある式典が行われた。
『二代目襲名の儀』
自然に囲まれ、都会的であり田舎的でもある不思議な町、阿弥樫町は、古来より妖怪がすみついていた。
その妖怪は百鬼夜行の群れとなり弱い者は強い者に守られて生活している。
百鬼の群衆を率いる頭首が、代替わりすることとなったのだ。
それの式典。
初代は伝説の大妖怪ぬらりひょんの由良恭子
圧倒的な妖気と恐ろしさを持つ美しい妖怪。
二代目は、彼女に拾われたたった26歳の男。
雪女の息子、雪代冬矢。
彼は妖怪でありながら人の、それも陰陽師の血を引く異端児であった。
多くの妖怪の前を歩く彼の姿。
それは雄々しく、堂々として、風格を漂わせた。
そして百鬼の前でのあいさつの時に、彼は宣言した。
「すべての百鬼は俺が守る」
強い意志を見せる紅い瞳。
血のような紅は、すべての妖怪の目をくぎ付けにした。
「黙って俺の背に続け」
新たな百鬼夜行の誕生であった。
< 1 / 39 >