雪女の背に続け

一方で、先ほど階段を上って行った秀明は、三階の恭子の部屋にいた。
そこではすでに恭子が酒を飲みながら待っている。秀明は中へ入って、その近くに座る。

「……。終わったか?」

「はい。一応は」

入ってきた秀明に気付き、恭子が目をやる。やつれた秀明がそこにいた。着衣も乱れて髪もボサボサで、老けて見えるほどだ。

「どうした、それは?」

「あんな危険な調査させておいてよく言いますね」

それを気にして聞いてみたら怒られた。
気を取り直し、恭子は改めて聞いてみた。

「報告を聞こうか。まずは狐火山から」

「……。狐火山はだいたいは大丈夫でしょう九尾は狐妖怪を束ねるために、共通の敵として町妖怪をあげているだけで、ここに洋子がいることからも、敵対の意思は感じられません」

恭子は秘密裏に秀明に山妖怪の調査を依頼していた。
もう引退した身であるために、冬矢に目くじら立てられることは分かりきっていたので、裏から秀明に頼むしかないのだ。
調べてほしかったのは、山妖怪が今後町妖怪に危害を加えるかどうか。そのことだ。

秀明が調べたのは、狐火山、白魔山、天狗岳と酒吞島、他にも様々な妖怪の住処。
それぞれに赴き、時には忍び込みそして式神を使わせて調べていった。

「ただ……」

「ただ?」

「敵対の意思はないですが友好の意思もありません。これからどう転んでも不思議ではないかと。一応の警戒は必要に思います」

「そうか……」

山妖怪の帝王である天狗次第で九尾は動かざるを得ない状況になるだろう。
そうなれば洋子でも止めきれない事になる。

「次は、白魔山だな」

そして次の報告に移った。
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