雪女の背に続け
「白魔山は問題なしです。二十七年前のことで町妖怪との確執は解消しましたし」
「……そうか。大丈夫だったか」
唯一友好的な山妖怪の集落。ここの報告は聞くまでもない。
そして次の報告に移った。
「酒吞島はどうだ?」
「町妖怪に対する敵意はありますけど、攻め込むほどの兵力はありません。警戒の必要はなしです」
聞くのも調べてもらうのも躊躇した場所だ。
鬼の住む島。鬼ヶ島の調査に秀明を向かわせたらどうなるのかも恭子は理解していた。
それでも調査を頼めるのは秀明以外にいないのだ。
報告は予想通りの物だった。
秀明は鬼に妻を殺されて、鬼を憎んで毎夜毎夜、鬼狩りをしてきたのだ。
狩られるにしたがって兵力は失われている。
今回の調査にかこつけて、また鬼を狩っていただろう。それの反対はしない。
協力も恭子はしてきた。とやかく言うつもりはないが、それが原因で陽との仲も難しい時期があり、これに懲りてほしいとも思っていたが、
秀明は懲りる奴でもなかった。
「まあ、まだ潜伏してるだろう茨木童子は要注意ですけど、狙うにしても俺でしょう」
「……そうか」
秀明に恨みの根は、深い。
そのあとも様々な場所の報告を聞いていく。
だがそこから先は、町妖怪への敵意を強く抱いている集落ばかりであり、危険な報告ばかり。予想はしていたものの、穏やかに流せないほどになっている。
極めつけは、
「天狗岳ですけど……ヤバいですよ」
山妖怪の頂点に立つ大天狗の住む天狗岳だった。