雪女の背に続け
弐 統一交渉
阿弥樫町の百鬼夜行を統一する。
その野望を果たすためには、妖怪たちの集落の長と力比べをする必要もある。
話し合いですむ所などめったにない。
「……なんで俺が」
その第一歩として行うのは、長不在の集落を吸収すること。
長がいない妖怪たちは百鬼夜行の群れを作れず、弱体化しつつあるのだ。それらを守る長を、彼らは欲している。
「兄貴に同席してもらわねぇと話を聞かないだろあいつらは」
「……あいつら、駆逐したほうが良いと思うんやけどー」
「却下」
ぐちぐち文句を言いつつ秀明は冬矢に続く。
まず向かうのは、橋を渡った先の『酒呑島』
鬼が住まう鬼ヶ島。秀明が鬼狩りを行っている場所。
強力な長であった酒呑童子が二人の父、白郎によって滅され、茨木童子は現在行方知れずの状態。長不在と、秀明の狩りによって島の鬼は激減。
か弱い餓鬼だけが住まう集落となり、今も秀明という脅威に怯えている。
わざわざそんな所に秀明を連れ込んだのは、冬矢に考えがあったからだ。
「約束しろよ」
「…………」
秀明は年甲斐もなく唇を尖らせ、冬矢を睨みつける。
可愛いのか可愛くないのか微妙な顔。とりあえず、鼻をグイッとつまんだ。
「いでででで……」
「約束する、凍らされる、どっちにする?」
「分かった分かった! 保証はしねぇけど」
脅しで無理矢理約束させた。
秀明はいまだに納得もなにもしていないようで、しぶしぶと言ったようすだ。
約束が決まったところで、二人は酒呑島に辿り着いた。